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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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続・Best before...?今さら北京オリンピックについて

「賞味期限切れ」エントリついでに調子に乗ることにした。
これまた8月に書こう書こうと思いつつ、時間が取れずに諦めてしまったトピックの一つは、北京オリンピックに関する考察。
オリンピックは四年に一度なのだもの、一ヶ月の執筆の遅れなんてその四分の一にしか過ぎないのだから、大目に見てもらおう。

私が現在暮らす2012年の夏季オリンピック開催国でもある英国も、金19個・総数47個と100年ぶりのメダル数を獲得し、珍しくナショナリスト的なムードに沸いた二週間だったけれど、色々な意味で今回の主役は明らかに開催国中国であったわけで、結果的にはその中国について様々なことを考えさせられることになった。(私は実は大学では現代中国政治専攻だったのだが、その割に言葉も全く出来なければ知識も少ないので、あまり宣伝しないようにしている。)

賛否両論の反応を承知でランダムに書いてみることにする。

一点目は、メダルー特に金メダルを取るということの意味。
刻々と更新される国別のメダル獲得数一覧を見て唖然としたのは、最終的に100個となった中国のメダルの数だけではない。
まず、三種のメダルの中で飛びぬけて金が多いということ(米国は金36・銀38・銅36の合計110個。一方、中国は金51・銀21・銅28の合計100個)。
重圧の中で、見事に世界の最頂点である金メダルを取るのは実に素晴らしい。
一方こちらはデータが見つからなかったので数字のバックアップがないけれど、中国と西側のメダル大国を比べた場合、おそらく中国は明らかに一人が一種目でのみ金メダルを獲得した例が多い。「西側のメダル大国」の代表である米国に目を向けると、Michael Phelpsのように一人で八個というのは例外としても、米国のメダリストは分かり易く言えば、「natural born athlete(=天性のアスリート)」のような人が多い。
彼等が努力していないなどという気は毛頭ないが、元々驚異的な身体能力に恵まれており、「やったら出来ちゃった」的な雰囲気が若干ある。
一方の中国の主として若きメダリスト達は、推測するに、物心のつくうんと前から、親や教師に象徴される「国家」そのものに「金メダルを取る=人生で唯一最大の目標」と刷り込まれ、おそらく殆どの場合は国の経済的援助を受けながら、ただひたすら練習に人生を賭けてきた若者達なのではないか。
・・・話は少し逸れるけれど、8月31日にRoyal Albert Hallで中国のLang Langが登場させた弱冠9歳の天才ピアニスト、Marc Yuの演奏を見た・聴いたときに、私は知らず彼の姿を、厚いメイクに包まれた小さな中国人体操選手達と重ね合わせ、何だか空恐ろしくなってしまった。

それに深く関連する二点目は、アスリートと政治の関係という、特段新しくもない題目。
頭の中でぼんやり考えていたことがそれなりに形になったのは、週二回ジムで鍛えてくれるパーソナル・トレーナーのDと中国のアスリートについて話をしていた時だった。
Dはイギリス人で、ムエタイ(タイ式ボクシング)で英国の頂点まで登りつめた本物のアスリートだ。
Dに、
「やっぱり社会主義国のアスリートの方が恵まれてると思う?」
と聞いたところ、間髪入れずに
「当り前だよ」
と熱っぽい答えが返ってきた。曰く、
「だって俺達(=資本主義国のプロスポーツ選手)の場合、自分以外誰も自分の面倒見てくれないんだから。ファイトマネーを稼ぐのは勿論のこと、メシも食わなきゃいけないし、洗濯だってするわけ。」
もちろん資本主義国のアスリートでも、私的な後ろ盾があるケースも多いだろうし、何せ中国の場合はまず約13億人という膨大な人口も鍵となるのだから、一般論化するのは乱暴に過ぎるかもしれないが、何しろプロのアスリートの言うことなので説得力がある。
・・・そういえば、ヒトラーもスポーツ&オリンピック至上主義だったっけ。

続・Best before...?今さら北京オリンピックについて_f0023268_785486.jpg
Dとのオリンピックについての雑談は実に興味深かった(といっても私の方はその間クロストレーナーで走ったり腹筋したりしているのだからあまり思うようには話せないのだが)。
もう一つ印象に残った会話は、飛込競技に参加したイギリス人女性チームのインタビューについて。彼女達は残念ながら予選敗退したのだが、敗退直後のインタビューで全員がTVカメラに向かって笑顔で、
「北京まで来られて良かった。良い経験だった。2012年に向けて頑張りたい。」
といった綺麗事コメントをしたらしい(D談)。
普段あまり感情を表に出さないDだが、このインタビューについては憤懣やる方ないといった様子で、
「あんなのあり得ない。アスリートだったら、負けたら悔しいと思うのが当然だろう。俺なんか、試合に負けた後のインタビューなんか受けたくもねーよ」
と吐き捨てるように言ったのが印象的だった。
勢いその日のトレーニングセッションにはいつも以上に熱が入ったのか、翌日は何だか筋肉痛がひどかったように感じたのは気のせいではないと思う(笑)。
by canary-london | 2008-09-28 07:10 | diary