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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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ミュージカルと「手触りの幸福感」について

金曜日は、女性3人で連れ立って人気のミュージカル「Mamma Mia!」を鑑賞。
1970年代を中心に活躍したスウェーデンのポップバンド・ABBAの音楽をフィーチャーしたミュージカル。
私は実は昨年のロンドン滞在中にも一度観に行ったのだが、そのときにはふと思い立って一人でぶらっと行き、楽しかったものの一緒に踊る(!)仲間がいなくてやや寂しい思いをしたので、今回誘われ二つ返事でOKした。

ストーリーの構成は至って単純で捻りがないといえばないのだけれど、ミュージカルというものの原点に戻ったとき、リスペクトすべき点が幾つかある。

一つは、兎に角音楽と踊りを純粋に楽しむEntertainmentに徹しているということ。
人生で初めて観たミュージカルは、高校生時代にロンドンに暮らしたときに母と観た「CATS」だった。「CATS」も話の筋などあまりないけれど、素晴らしい音楽と踊りを楽しめ、作り手が「観客はミュージカルというものに何を求めるのか?」ということを考えて作ったものなのだな、と感じた。

二つ目。一点目とも関連するけれど、ミュージカルたるもの、やはり「分かり易さ」は重要だと思う。オペラのように、必ずしも原作で荒筋の予習をしたり、また難しい時代背景を分からない歌詞から読み取ろうと努力するという真剣な姿勢は観客には少なく、単純にenjoyしよう!との気持ちで出掛けるのがミュージカル。
もちろん様々な意見があると思うけれど、その意味では同じく高校生時分に観た「レ・ミセラブル」などはミュージカルとしてはやや難解過ぎたように感じた(高校生だったので、という部分はあるかもしれない。今観たらもっと楽しめるかも・・・)。

三つ目。ストーリーの構成は単純、と書いたが、実はディテールは結構良く考えられている。
飽くまでもスポットライトはABBAの音楽に当てられているので、音楽にそして歌詞に沿うような場面設定がなかなかニクイ。
勿論、ぴかぴかの白いパンタロン・スーツにサングラスといったABBAスタイルのファッションも楽しみの一つ。

ミュージカルと「手触りの幸福感」について_f0023268_2115181.jpg最初から最後までこれでもかっというABBA尽くしのミュージックに、観客も最後は総立ちとなって役者達と一体となって踊りまくるというのがMamma Mia!のお決まりのパターン。
今回も例に漏れず最後は我々日本人女性3人、サークルの席から転げ落ちそうな勢いで踊っていたのには、周囲のイギリス人もびっくりしていた。

ところで、改めて素晴らしいなと思った歌詞。
Thank you for the music
最近の自分の気持ちを実に良く表していて、それこそ有難う!と言いたくなった。

Thank you for the music, the songs I'm singing
Thanks for all the joy they're bringing
Who can live without it, I ask in all honesty
What would life be?
Without a song or a dance what are we?
So I say thank you for the music
For giving it to me

ミュージカルに出掛けると、もう一つ決まって抱く思いは、夢見心地な子供時代の回顧。
例えばCATSを観たとき。
自由気ままに舞台を駆け巡る三毛猫やらシャム猫やら個性の強いキャラクターを眺めながら、「ミュージカルに出たい!!!」なんて思いながら帰途についたことを思い出す。
歌も踊りも人並み以下にしか出来る訳がないのだが、わりと真面目にそんなことを考えているのだから今思えば笑ってしまう。
16-17歳ぐらいまでだろうか。
自分が何に長けているのか、ということを直視することなく、自分には無限大の可能性が残されている、と錯覚していた時期。
その後、大学へと進み、会社に入り、自分が選ぶことの出来る道は消去法によりどんどん狭められていく現実に否が応でも気づかざるを得ない。

歌や踊りで、純粋に他人の目や耳を楽しませること。
音楽や絵画・映画などのアートで、直接ハートに訴えかけること。
小説や詩などの文章で人の心に響くこと。
美味なるお料理で舌を心地良くさせてくれる料理人。

他人に与えられる、手触りの幸福感。
自分には一体、他人にどんな手触りの幸福を与えることが出来るのだろうか。
by canary-london | 2006-10-15 21:14 | diary