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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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「社会のため」ということ: 自分なりに咀嚼する社会起業家論への挑戦その1

「Social Entrepreneur=社会起業家」という分野は、エコノミック・アニマルとも揶揄される投資銀行で働く自分にとっては全くもって専門外であるほか、Tack様はじめとして周囲にこの分野を専門とされる方が多数いらっしゃるため、自分でコメントするのも僭越と思ってこれまで何となく控えていたけれど、自分でも非常に興味のあるこのコンセプトを一人でも多くの人に紹介できればとの思いから、思い切ってチャレンジしてみることに。
(といっても、冒頭断っている通り、あくまでも「私なりに」咀嚼した私的社会起業家論ですので悪しからずご了承下さい。)

カタチから入ってしまうのだけれど、まずは社会起業家というコンセプトの成り立ちについて少々。

CSR(企業の社会的責任)とかSRI(社会責任投資)とか。
最近これらの言葉を耳にすることが異様に増えたけれど、「Social Entrepreneur」(のコンセプト自体は、そもそもは1997年に発足した(そして今正に崖っぷちに立たされている)英ブレア政権の政策ブレーンであったアンソニー・ギデンズ(Anthony Giddens)がその著書の中で使用したのが最初といわれている。

現在自分が英国に暮らすこともあり、今は昔で英国の現代史を簡単におさらいすると、1960-70年代の英国は「揺りかごから墓場まで」と揶揄された高福祉社会であった。莫大なる支出に1973年のオイル・ショックが追い討ちを掛け、1970年代半ばから後半にかけて英国の国家財政は事実上ほぼ破綻状態に(「英国病」蔓延)。
1979年に財政再建を至上命題として登場したサッチャー政権は、福祉政策のスリム化と国家事業の民営化を通じた経済再建を徹底して推し進める一方、この過程で社会的弱者の切り捨てという社会問題も生むことに。
(蛇足ながら、同時代の米国もレーガン政権の下で「小さな政府」を標榜して国家財政のスリム化を推し進め、背景は異なりながら結果的には英米の両方でこのニッチを埋めるべくNPO発展の土壌が形成された経緯がある。)

サッチャー時代を経て1997年に登場したブレア政権は、このような状況下、英国の進むべき道として「第三の道」を提唱。「第三」とはすなわち、社会主義とも市場経済とも異なる新たなる道との意味合いで、言うなれば「近代化された社会民主主義」ということになる。
「社会のため」ということ: 自分なりに咀嚼する社会起業家論への挑戦その1_f0023268_9514831.jpg


この「第三の道」の主要なテーマは、マリリン・ハワード氏を引用すると以下の3つ:
1. 社会的目標と経済的目標は相補的なものであり、収入のみならず仕事や教育などの機会の再配分が必要
社会的排除の防止・治癒は経済的目標の充足にも繋がり、民間企業にとっては企業としての社会的責任を果たすことにもなる。
2. 権利に加えて責任も ~ works both ways
社会は困窮している人々を助ける責任を持ち、また個人は自立の責任を持つ。生活保護を受けずに自ら職を得ることは、最高の自立の手段である。
3. 地域社会(コミュニティー)
市民参加の基礎となる知識を提供できる最大のフォーラムは市民社会である。

いってみれば、上記の三つのテーマを体現するための具体的な方策が、Social Entrepreneurshipというところだろうか。

「はじめの一歩」のうち半歩すら踏み出していない感じだけれど、やや重いテーマで普段の私のおちゃらけエントリに慣れている読者の方も疲れると思う (自分の寝る時間がなくなるというより切実な問題がある。人のせいにするなんて我ながら勝手・・・) ので、今回はここらで小休止して、実際のSocial Entrepreneurについては次回以降持ち越しです・・・・・。
by canary-london | 2006-05-23 09:53 | social entrepreneur