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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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ロンドンの強みに関する考察

オフィスでいつものように世界のニュースを眺めていると、こんなヘッドラインが目に入った:
「世界都市総合ランキング、日本は4位に 森記念財団」
判断の基準としては、「経済」、「研究・開発」、「交流・文化」、「居住・環境」、「空間・アクセス」の5分野を中心としたクライテリアから、世界の主要都市30都市をランク付けしている。
一位ニューヨーク・二位ロンドンという部分も、またもっと言うなれば、東京についての
「‘経済’や‘研究・開発’の得点は高いものの、‘居住・環境’および‘空間・アクセス’で大きく順位が劣後する」といったコメントに特段意外性はない。

改めて考えさせられたのは、ニューヨークの第一位は揺るぎないものとして、やはり不動の二位の感があるロンドンの持つ「強み」とは一体何なのだろうか、ということ。
再三書いているとおり、例えば「外食の質の高さ」などでないことは間違いない(笑)。
前述の5つの分野という軸に沿って見てみると、「経済」と「研究・開発」がトップ3内に入ることに加え、「交流・文化」が第一位というのは喜ばしいことであるし、非常にフェアな評価であると思う。

この設問を改めてしてみたとき、一つ確実な要素として思い当たったことがある。
それは何かというと、「若さ」。

もしかすると投資銀行業界特有の傾向なのかもしれないが、ロンドンの面々はとにかく若い。

それには明確な理由が幾つかある。
一つは、多くの大学が三年で学士号の取得できる学部・コースを設けているため、若く社会に出る人が非常に多いこと。
さらに大きいのは、米国と違って「猫も杓子もMBA」(というとMBAホルダーに失礼だが)という傾向がないことだと思う。
これで三年間トクする計算。
また現在でこそさすがに少数派になったものの、大学まで進んでいない人も、特に昔は多かった。
ユーロボンド市場全盛期の1980年代は、16歳でマーケットにデビューするような「金の卵」は会社としても貴重なアセットであり、学歴には関係なく、いかに現場で経験を積んだかが物を言う時代。
少なくなったとはいえ、今もこの時代の生き残りはまだまだ活躍している。

私が債券本部に所属していることも大きな理由の一つだろう。
部署による差は確実にあり、企業買収などを担当する所謂「バンカー」である投資銀行本部は、やはりロンドンといえどもMBA崇拝カルチャーが強いように感じる。
MBAについて余談になるが、ヨーロッパにいると、国ごとにMBAに対する考え方が全然異なる点も面白い。例えば、スイスや北欧の一部の国などは比較的MBAホルダーが多く、これらの国出身の人は割合年齢層が高い、といった具合。
それでも、私が長く働いた東京オフィスに比べると、とにかく圧倒的に若い。

そんなロンドンの「若さ」が自分にとって意味することを考えると、間違いなくプレッシャーは大きい。
プレッシャーという言い方には語弊があるが、「良い意味での刺激」というべきか。
要は、自分より年齢の若い人がどんどん昇進して大きな責任の仕事に就いていくのを目の当たりにするということ。
肩書きという観点からいうと投資銀行業界では一つの頂点といえるマネージング・ディレクターに就任する人の中には、ごく稀ながら20代での就任例もある。

直近の金融危機の只中においては、身近な若手の活躍を見ると、何とも言えず誇らしく頼もしい気持ちにもなる。
L社の破綻に伴って市場にもたらされた果てしない規模の混乱、各国政府による銀行救済、底なしの株価下落など、正常な環境下では考えられない事態が次々と起こり、そのたびに重大な判断を迅速に下すことが求められる。
危機をクリアするごとに、ビジネスパーソンとして一つ大きく成長する感じ。
巷で言われているとおり、「投資銀行」というビジネスモデルの崩壊を含めて弊業界は青息吐息だが、難しい時期を経て、個人の力量は確実に上がっているように思う。

日本に目を向けると、やはり子供の頃から年功序列カルチャーが刷り込まれているからだろうか。私と同年代から少し下の世代は、どうしても会社で遠慮がちな傾向がある。
実力に裏打ちされたしっかりとした意見を持っているのだから、年上に遠慮することなく決然と発言すれば良い。
日本も、幕末など昔の同世代の若者は余程しっかりしていたのに。
・・・などととりとめもなく考えるうちに、ついつい坂本龍馬を連想してふとWikipediaを見たら、何と龍馬氏、今の自分と同年齢で他界したことに気づいて何やら情けない気持ちになってしまった・・・。
by canary-london | 2008-10-24 06:17 | current