ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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久々週末散歩: Kenwood House

雪模様の続く東京とは裏腹に、ロンドンはこのところこの時期らしからぬ好天が続いている。
先週末もからりとした晴天に恵まれたため、ロンドン北部に位置するハムステッド・ヒースへと足を向けた。
ハムステッド・ヒースは、ロンドンの中心部に程近いとは思えないほど、広大な「荒野」という言葉の似合うひとかたまりの土地だ。
「公園」と呼ぶことすら、何かここには似つかわしくない気がする。

雨のない時期でも足元のぬかるむそんなヒースをのんびりと散歩したいという気持ちもあったのだが、真の目的はヒース内に位置する美術館「ケンウッド・ハウス」。
現在はEnglish Heritage Foundationが管理する白亜の建物は18世紀末のもので、中に保管される美術品は、ギネス・ビール創設者の曾孫にあたるアイヴィ伯爵という貴族が20世紀前半に蒐集したものである。
今日のお目当ては、このコレクションの一部であるフェルメールの作品。
ロンドン滞在も長くなってきたというのに最近住人の心持ちなのかすっかりフットワークが重くなり、実のところこの美術館も初めて訪れる。

現存するフェルメール作品の数については諸説あるものの、37点というのが一般的か。
これまでもフェルメール作品はパリやアムステルダムで散発的に見る機会はあったものの、なかなか体系立てて鑑賞する機会がない。
ロンドンには、ナショナル・ギャラリーに二点(「ヴァージナルの前に立つ女」と「ヴァージナルの前に座る女」。ちなみに私はおそらく「・・・立つ女」しか見たことがないように記憶している。)あるほかには、このケンウッド・ハウスの一点のみ。
エジンバラのナショナル・ギャラリーに所蔵されるものを加え、英国全体でもフェルメールはたった四点しかない。

そういった意味では貴重な一点なのだが、ここに展示される「ギターを弾く女」は、見ると正直なところ若干拍子抜けする。
フェルメールにしては珍しく、絵の右側に光源がある。
ギターをかき鳴らす少女の肌の色はグレーのような暗い色で、生身の人間の肌の色からは程遠い感。保存状態の悪さ*のためかとも思うが、一方で少女の頬の色は不自然なほど紅潮し鮮やかな桃色。
他のディテールの不味さについて指摘する専門家も多いが、色調と共に、ギターという楽器の描き方の稚拙さもやや気になった。
*この美術館の保存状態の悪さについてはついぞ有名。ごく最近までは珠玉の作品を多数そろえているにも拘らず警備手薄で、1974年にはフェルメールの同作品が盗難の憂き目にあったのは有名な話である。

同じ部屋に所狭しと展示された数々の絵画の中では、レンブラントの晩年の自画像の方が余程インパクトが強い。
もっとも、個人的には父の敬愛するGeorge Romneyの描いたレディ・ハミルトン(ネルソン提督の愛妾)の画二枚も非常に気になったのだが。

何しろ興味深いコレクション。
フェルメールとレンブラントが所蔵されると同じ部屋に、現存する世界最古のピアノ・メーカーとされるBroadwoodの1791年製のピアノ↓が置かれている。これと並んで、パイプ・オルガンの姿も。
古く美しい楽器の姿かたちには、思わず息を呑む。

f0023268_9465874.jpg前述のとおり、ここのフェルメールは正直なところ期待外れだったが、この美術館にはそれに代えられない価値があると思う。

第一に、とにかく静寂の中で世界有数の美術作品を見ることが出来ること。
今回のフェルメールの例をとると、途中から人が入ってきたとはいえ、地球上にある37点のうちの一つを、私はしばし一人で眺めていた。
同じロンドンでもナショナル・ギャラリーではもちろんこんなことは不可能だし、日本に時折誘致される特別展でのフェルメール作品においては黒山の人だかりとなる。
一瞬であったとしても、静寂と孤独の中で素晴らしい芸術作品と触れ合える機会というのは、残念なことに昨今非常に稀である。

第二に、ハムステッド・ヒースという荒野の中に美術館があるというセッティングには、やはり何とも言えない興奮が伴う。
ハムステッド・ヒースは、子供連れおよびペットを飼う人々にとってのオアシスであり、現に歩き回って遭遇するのは十中八九犬を連れた夫婦か家族連れである。
そんな中で、芸術作品を鑑賞するというある意味でのミスマッチが実に心地良い。

ハムステッド・ヒースおよびケンウッド・ハウスには、また是非足を運びたいと思う。
他のフェルメール作品についても言いたいことは山のようにあるが、また次節。
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by canary-london | 2008-02-20 09:48 | diary