人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

リーダーのスピーチ

以下も、実は数カ月前に書こうと思ってチャンスがないままに時間が過ぎてしまったものの一つ。
2007年に自分が聞いた中では最も印象的なスピーチだったので、やはり簡単に記録に残すことにしようと思う。

9月のことだったと思うが、弊社で私の所属する債券本部のグローバルの本部長(米国に拠点を置く米国人)・Jが退任した。といっても、昨年相次いだ「サブプライム問題に絡んだ引責辞任」というものでは決してなく、危機勃発前の4月頃から本人は退く意思を決めていたという。

「従業員一人当たりの純利益を伸ばす」というゴールを徹底して追求するやり方が時に非情ともいわれた辣腕家。
もちろん、拠点も異なる雲の上の存在だけに私なぞが直接接触することはなかったが、クールでビジネスライクな典型的なアメリカン・ビジネスマンという印象を持っていた。

そんな彼の退任スピーチは(ニューヨークで行われたため、我々はロンドンの大会議室に集い、スクリーンを通して眺めたのだが)、普段の印象とは打って変わって実に感傷的だった。

四年前に本部長の職に就いた直後、直属の部下であった女性の一人が、弊社のカルチャーについての問題点を羅列してライバル会社へ移籍。
それを個人的に受け止めたJは、彼女の「捨てゼリフ」の中でも、とりわけ「職場内の人間同士の助け合いがない」という点を改善すべく奔走した四年間だったと回想した。
このタイミングでの退任は彼自身の判断だったのだから、「カルチャーを変える」という就任当時のゴールを達成できたのだろう。

残される我々にとってのアドバイスも単純明快。
ひとつは、
「どんな判断をする際にも、自分が会社の経営者の立場に立って判断すること。」
もうひとつは、
「会社に重要なのは、とにかく人材。良い人材を集める労を惜しまないこと。」

欧米では、彼のように、一つの職業でひと財産築き、且つ何らかの精神的ゴールも達成した段階でさっさと第二の人生に移行する例が非常に多い。
今年夏には、ビル・ゲイツ氏がMicrosoft社の日常業務から引退し、既に驚異的な規模で展開している慈善活動に注力していくとのこと。
Jの場合は47歳での引退なのでそんなに早い方ではないが、この精力的なビジネスマンは一体どんなセカンド・ライフを送るのだろうか。

更に私の興味を引いたのは、Jとその家族の今後一年間の予定。
奥様と設けられた二人の息子は高校生と中学生とのことだったが、息子二人には一年間学校を休学させ、世界一周旅行に出るのだそうだ。
ギリシャを皮切りにヨーロッパを巡り、アフリカ、南米、オセアニア・・・・ざっくりとそんなプランだったように思う。
「学校に行かれない間、子供達には家で教育を与えるんだ。きっとこれまでやったどんな仕事よりも大きな試練だね。」
と語るJの目からは、未知の大仕事への当惑よりも、新たな挑戦に対するポジティブなエネルギーが伝わってきた。

Jのセカンド・ライフにも興味津々だが、普通のティーンエージャーとは全く違う体験をする二人の息子がどんな大人になるのか、彼らの二十年後を覗いてみたいものだと感じながら拍手を送った。
by canary-london | 2008-02-11 11:09 | business