ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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Last Promsと英国的ナショナリズム

イギリスという国に暮らしていると、英国民の「ナショナリズム」のような感情に遭遇することは実に稀なので、英国にナショナリズムという概念はないに等しいのではないか??と感じるようになる。
もちろんそれは、自分の国を愛していないということではなくて、その姿勢や表現方法が、所謂「愛国主義者」から想像するものと大きく異なるだけなのだろうと思う。
使い古された議論ではあるが、この点で好対照を成すのが、米国の「コテコテ」のナショナリズムである。現在のブッシュ政権のもとでは、この「コテコテ」度がさらに増幅されている感があるが、教育の賜物というべきか、米国民の中には実に分かりやすい「愛国心」が、体の隅々にまで流れているのだ(そういえば、NYで過ごした小学生時代は、意味も分からず毎日米国旗に敬礼しながら国家を歌っていた)。

米国での同時多発テロ・9・11(6周年の今日言及しているのはただの偶然なのだが)と、ロンドンでの7・7に対する両国民の反応・対応にみるこの違いを、以前ごく私的且つカジュアルな文章にまとめたので、いずれ発掘することがあれば、ここでもご紹介するかもしれない。

いつもながらに冒頭から脱線したが、英国民の「ナショナリズム」についてであった。
この週末にひょんなきっかけから行ったイベントが、実のところ、ロンドンに来てから(高校時代も通算して5年強)、もっとも英国的ナショナリズムを感じた行事だった。

そのイベントとは、「Last Proms」。
二ヶ月近くにわたるクラシックのコンサート・BBC主催による「Proms」の最後の夜である。
(この場を借りて、一緒に行こうと誘ってくれたAさん、そして入手困難なチケットを二人分快く譲って下さったO氏に深謝致します。)

Promsについては、昨年本ブログでも紹介したことがあるが、正にロンドンの夏の風物詩と呼ぶに相応しい。
主会場となるRoyal Albert Hallは、コンサート・ホールというよりも、ドーム型の球場のような風情で、音が拡散してしまうため、音質は良いとは言い難く、それを理由に「Promsへは行かない」主義を固持している人もいる。
そういう面はあるのだが、Promsは、とにかく「お祭り」なのだ。
難しいことは考えず、楽しければ、まあいいじゃない。

フタを開けてみれば、「楽しければいいじゃない」の集大成のようなイベントだった。
演奏者も、男性は白のタキシード、女性はイブニングドレスで登場。
聴衆も、大概は英国旗をあしらった思い思いの衣装を身にまとう(私の隣のオバサマは、お世辞にもスレンダーとはいえないボディをバド・ガールよろしく全身ユニオン・ジャックのボディコンドレスで包んでいた)。
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クラシックのコンサートというと、静寂が基本的ルールだが、この日だけは違う。
演奏中こそ静かに聴いているものの、曲の合間には、風船やらクラッカーやら、ありとあらゆる物が宙を舞う。
演奏者も実にノリが良く、この日はソプラノとして超大物のAnna Netrebko(アンナ・ネトレプコ)が登場したが、歌いながら赤いバラと投げキッスを配り歩く大サービスぶり。
エンターテインメントとしても存分に楽しめた。

で、英国的「ナショナリズム」。
私も日本人の友人と共に、服装こそ普通だが、会場の外で売っている小さな英国旗を買って臨んだ。
後半にかけては、前半を更に上回る盛り上がりぶり。
お決まりの、Elgarの「威風堂々」や、Henry Woodの「Rule Brittania」、最後を締めくくる国家斉唱となると、聴衆全員が総立ちで、国旗を振りながらの大合唱となる。

確かに普段のPromsに比べて生粋の英国人が多い感はあるものの、よく見ると、我々のような日本人を含め、様々な国籍の人が旗を振っている。
更にいうと、ユニオン・ジャックがルールということでは決してなく、この日の指揮を務めたJiri Belohlavek(イルジー・ビエロフラーヴェク)の出身地であるチェコの旗や、理由は不明だがドイツやオーストラリア、果てはどこのものか見当もつかないような旗もちらほら。
且つ、会場が一体となって、英国を象徴する歌を大合唱しているのは、何とも不思議な光景。
これが、緩やかなる英国のナショナリズムかなあ、などと感じた次第だった。

Belohlavekは、今回が初の「Last Proms」の指揮者だったが、独特な雰囲気を適度に楽しみつつ、そつなく大役をこなしていた。
スピーチで、Promsのことを「world’s biggest and most democratic music festival」(=世界で最大且つもっとも民主的な音楽祭)と形容していたのが印象に残った。

それにしても、この記念すべきイベントで俄かナショナリストになるべく、先の3曲の歌詞ぐらいは暗記していくべきだった・・・と帰りの道すがら反省。
決して排他的にならないナショナリズムがまかり通る英国という国をまた一段と好きになった夜の幕は、「蛍の光」(“Auld Lang Syne”)の合唱で閉じていった。
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by canary-london | 2007-09-12 03:39 | culture