他愛ない旅のメモ・ミラノ編②: オペラ報告に代えて
2007年 02月 16日
ミラノを旅程に含めたそもそもの目的は買物ではなく、スカラ座でオペラを観ることであった。
当ブログでも以前書いた通り、私はことオペラとなると若葉マーク全開の初心者であるため、比較的ポピュラーな演目にしたいとの思いが強く、ワーグナーの「ローエングリン」へ。
長年のラブコールの末に今シーズンからスカラ座でタクトを振り始めたDaniel Gattiの指揮には、何度かのコンサートを通じて馴染みがある。
ポピュラーな演目といっても、そこはライト級など存在しないワーグナー。
二度のインターバルを挟んで合計5時間の公演に臨むにあたっては、それなりの気構えも必要になる。
気構えが過ぎた感はあるが、前夜はDVDで予習にいそしみ、ついつい夜更かしして睡眠時間2時間。程よい暗さと心地よい背もたれの中、正直瞼の重さに耐え切れなくなったのは一度や二度ではなかったけれど、何しろ豊かな5時間だった。
キャストの歌唱力や演出については私より遥かに詳しい専門家の皆さん(周囲にも多数)お譲りすることにするけれど、フィナーレを除いてローエングリン役のRobert Dean Smithはちょっと弱かった印象。
それにしても、Gattiの指揮のもとではオーケストラ全体がきりっと引き締まる。
大規模な改修が2004年に終えられたばかりの劇場のセッティングは華やか。
もちろん老舗の劇場の貫禄も併せ持っている。
天井桟敷を除いて全てボックスとなっているバルコニー席が印象的な造り。
パリのオペラ・ガルニエの洗練された華やかさとは少し異なり、もう少し野性味がある印象は国民性を反映しているのだろうか。
ちょっと奮発して取った、STALLSのわりと良い席に陣取る。
飛行機のスクリーンよろしく個別の席に設けられた英語字幕をはじめとして、設備は申し分ないのだが、あえて言うなれば改修時に序でに座席の傾斜をもう少し急にしてほしかった。
西洋人は大柄で座高も高い人が多いので、ほぼフラットに感じるような緩やかな傾斜では、前の人の頭が邪魔になって肝心の舞台が見えない局面がしばしばある。
舞台装置は、正直シャビーな感の強いロンドンのロイヤルオペラに比較すると、やはり充実感が高い(と思う)。
特筆すべきは、プログラムだろうか。
15ユーロという値段にびっくりして一冊入手すると、ずっしりと重い。
買うときにスタッフがその旨警告してくれるのでほぼ興味本位で購入したのだが、200ページに迫る立派な本のうち、英語は「synopsis(あらすじ)」の2ページしかない。
(実はこの「あらすじ」だけは、日本語訳もある)。
最後に、大陸ヨーロッパでオペラや少し特別な音楽会に出掛けるときに最も好きなのが、何とも言えない「心地良い緊張感」である。
ロンドンの観客・聴衆はカジュアル志向が極端に強く、オペラでもジーンズ姿が珍しくないのが少し寂しい。
大陸へ行くと、マチネでない夜の公演は特に、きらびやかなイブニングドレスの女性も少なくない。
日本のように、オペラが物凄く値段も敷居も高い「限られた一部の人達向けの娯楽」ではなく、基本的には誰にでもオープンな場である。
その一方で、誰もが「少し特別な夜」を楽しもうと、うきうきしながら出掛ける、そんな素敵な感覚。
昨年8月のザルツブルグ音楽祭へ行ったときにも全く同じ印象を受けた。
オペラや年一回催される由緒ある音楽祭は、「少し特別な夜」だから。
心地良い緊張感、これからも忘れずに臨みたいものである。
当ブログでも以前書いた通り、私はことオペラとなると若葉マーク全開の初心者であるため、比較的ポピュラーな演目にしたいとの思いが強く、ワーグナーの「ローエングリン」へ。
長年のラブコールの末に今シーズンからスカラ座でタクトを振り始めたDaniel Gattiの指揮には、何度かのコンサートを通じて馴染みがある。
ポピュラーな演目といっても、そこはライト級など存在しないワーグナー。
二度のインターバルを挟んで合計5時間の公演に臨むにあたっては、それなりの気構えも必要になる。
気構えが過ぎた感はあるが、前夜はDVDで予習にいそしみ、ついつい夜更かしして睡眠時間2時間。程よい暗さと心地よい背もたれの中、正直瞼の重さに耐え切れなくなったのは一度や二度ではなかったけれど、何しろ豊かな5時間だった。
キャストの歌唱力や演出については私より遥かに詳しい専門家の皆さん(周囲にも多数)お譲りすることにするけれど、フィナーレを除いてローエングリン役のRobert Dean Smithはちょっと弱かった印象。
それにしても、Gattiの指揮のもとではオーケストラ全体がきりっと引き締まる。
大規模な改修が2004年に終えられたばかりの劇場のセッティングは華やか。
もちろん老舗の劇場の貫禄も併せ持っている。
天井桟敷を除いて全てボックスとなっているバルコニー席が印象的な造り。
パリのオペラ・ガルニエの洗練された華やかさとは少し異なり、もう少し野性味がある印象は国民性を反映しているのだろうか。
ちょっと奮発して取った、STALLSのわりと良い席に陣取る。
飛行機のスクリーンよろしく個別の席に設けられた英語字幕をはじめとして、設備は申し分ないのだが、あえて言うなれば改修時に序でに座席の傾斜をもう少し急にしてほしかった。
西洋人は大柄で座高も高い人が多いので、ほぼフラットに感じるような緩やかな傾斜では、前の人の頭が邪魔になって肝心の舞台が見えない局面がしばしばある。
舞台装置は、正直シャビーな感の強いロンドンのロイヤルオペラに比較すると、やはり充実感が高い(と思う)。
特筆すべきは、プログラムだろうか。
15ユーロという値段にびっくりして一冊入手すると、ずっしりと重い。
買うときにスタッフがその旨警告してくれるのでほぼ興味本位で購入したのだが、200ページに迫る立派な本のうち、英語は「synopsis(あらすじ)」の2ページしかない。
(実はこの「あらすじ」だけは、日本語訳もある)。
最後に、大陸ヨーロッパでオペラや少し特別な音楽会に出掛けるときに最も好きなのが、何とも言えない「心地良い緊張感」である。
ロンドンの観客・聴衆はカジュアル志向が極端に強く、オペラでもジーンズ姿が珍しくないのが少し寂しい。
大陸へ行くと、マチネでない夜の公演は特に、きらびやかなイブニングドレスの女性も少なくない。
日本のように、オペラが物凄く値段も敷居も高い「限られた一部の人達向けの娯楽」ではなく、基本的には誰にでもオープンな場である。
その一方で、誰もが「少し特別な夜」を楽しもうと、うきうきしながら出掛ける、そんな素敵な感覚。
昨年8月のザルツブルグ音楽祭へ行ったときにも全く同じ印象を受けた。
オペラや年一回催される由緒ある音楽祭は、「少し特別な夜」だから。
心地良い緊張感、これからも忘れずに臨みたいものである。
by canary-london
| 2007-02-16 10:45
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