ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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ブレアの失墜と7・7と星条旗とユニオンジャックに関するカオス的思想

そもそもは、9・11とブッシュとアメリカについて書き始めたのであった。
過去3週間程度のイギリスの政治舞台における混沌は急展開で進んだ。
9月6日に、15人の若手労働党員(下院議員)がブレア首相に即刻退陣を求める書簡を提出したのに続き、うち8人が役職から辞任。
ほどなくしてブレア首相は「一年以内の退陣」表明を余儀なくされ、本日9月26日には、労働党党首として最後のスピーチがマンチェスターにて行われたところである。

ブレア首相の権威失墜の理由については、ブッシュ政権への完全なる迎合と映った中東政策における失敗、直接の引き金を引いたとされる7月のイスラエルによるレバノン侵攻時に(他の欧州首脳と違って)即時停戦要求を行わなかったことなど外交政策における失敗から、社会保障改革など国内政策に関する不満まで、あらゆる原因が取り沙汰されている。
この辺りの分析は専門家および勝手な議論を展開するメディアに任せることとして。

ブッシュに対する米国世論の支持が2001年9月11日直後に歴史的な高水準に達した後、その後のイラク侵攻を初めとする一連の出来事を受け、足下で急激な落ち込みをみせていることは前回概観した通りである。

一方のブレア首相に対する支持率の推移をみると、大体以下のような傾向を見て取ることが出来る。
1997年5月の首相就任(同時に18年ぶりに英国労働党が地滑り的勝利によって政権に返り咲いたタイミングでもある)から5ヶ月経過した同年10月の世論調査では、英国民のブレア氏に対する支持率は75%近くに達した。
この数字、サッチャー女史が1982年に記録した同政権としての最高記録である59%、および1991年のメージャー首相の最高記録61%と比較しても、異常に高い数字といえる。
一方、直近9月11日の調査によれば、ブレア政権に「満足している」と回答した人の比率は26%と往時の3分の1を下回る水準に凋落。

過去9年間の推移を定期的にフォローするには同条件で比較を行ったデータが不足するものの、ブレア首相に対する支持率の低下は、政治的事象に絡んで大幅に振れることは少ないことが特徴的であるように見受けられる。
支持率低下が加速したのは過去一年程度。
特に過去数ヶ月間においては、上記同様「ブレア政権に満足」と回答した比率が今年1月の36%→4月29%→9月26%と一貫して落ち込みをみせている。

そんな中で、目を引くのは2005年7月24日の調査結果(調査期間は7月14-18日)。
言うまでもなく、7月7日のロンドンにおける同時多発テロ発生直後のデータである。
ここでは、「満足」と回答した人の比率が44%に上るなど「不満」の47%に肉迫。

では、テロという極限の状況下では、国民は無条件に国旗の下で一致団結するのか。
自分の答えは、否、である。
それが、米国と英国の違いを理解する一つの鍵であるように思えてならない。

2005年7月7日。
私は今回の勤務に先立つ6ヶ月程度の長期出張で、やはりロンドンオフィスに勤務していた。

あの日のこと、およびあの日の直後のロンドン市民について思いを馳せると、「resilience」
(辞書を覗くと「立ち直る力」などと訳されているが、もう少し気の利いた邦訳はないものだろうか?)という言葉がまず頭に浮かぶ。
テロの当日や翌日、TVカメラとマイクを向けられるロンドン市民が決まって口にした文句。
‘…but we have to get on (with life)’
この言葉を聞くにつけ、ロンドン市民の冷静沈着、悪くいえばドライな面に脱帽した。
さらに悪くいえば、この人達は伊達にIRAとの血みどろの歴史を生きてきている訳ではなく、表現は変だけれど「テロ慣れ」しているのだ、ということも痛感。

イギリス国民でもない私が言うのは変だが、あのとき、グレンイーグルズで開催されていたG8首脳会議から大急ぎでロンドンに戻ってきて国民に誠意のこもったスピーチを行ったブレア首相の背中は、とても広く頼り甲斐があるように見えた。
もしやこの国もまた、テロという極限状況の中で、ブレアというリーダーの下で一致団結するのでは?という印象を抱きすらした。

結論としては、(米国と違って)英国においてはこのような思考はやはり存在し得なかったのではないかと思う。
現在のブレア首相の斜陽ぶりの真の理由については、これから明らかになる部分も多いことと思うのだが(個人的には、9年間にわたる政権安泰に胡坐をかいた結果として恥部を晒け出した労働党の内紛が一般世論の支持率低下という悪循環に繋がったような気はする)、間違いなくいえることは、米国におけるブッシュ人気暴落とは性質が異なるということである。

ふと欧州大陸を見やると、スペインのアスナール前首相、そしてイタリアのベルルスコーニ前首相という、ブレア首相に加えて欧州におけるイラク戦争推進派にあたった2首脳が今年退陣。
ブレア首相の退陣で、欧州の中東政策は新しい時代を迎えるのか。
そのとき、米国は、日本は、世界は・・・?

*一連の世論調査出所: Ipsos MORI
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by canary-london | 2006-09-27 08:37 | current