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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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最近の記事から: ECONOMIST誌’A Guide to Womenomics’(4月15日号)

最初に断っておくと私は全くフェミニストではないが(勿論定義にもよるが、女性の「フェミニスト」なる方々は、殊更に権利ばかり主張し果たすべき義務とのバランス感覚に欠ける人が多いような気がして個人的には苦手である。)、今般の記事には少なからず考えさせられた。

まずは、幾つかの数字と事実の概観。
1. 経済成長の牽引役
経済学の教科書にもあるとおり、経済成長の三大要因は①資本の成長(設備投資)、②労働供給の成長(労働力の増加)、そして③技術進歩、の三つである。
女性の社会進出を象徴する一つの数字を取ると、1970年以来平均して男性一人に対して女性二人が雇用されている。
このことからざっと計算すると、先進国における女性の社会進出が経済成長に寄与した度合いは、技術進歩、はたまた成長の牽引役の代名詞となった中国やインドなどの一国の寄与度を遥かに上回ることになる。
2. 勉強する女性達
現状米国では、大学の学位取得率は女性が男性を上回り、その比率は約1.4倍。スウェーデンなど女性の社会進出が更に進んでいる国では、この数字は1.5倍程度に達する。
一方、医師や弁護士などの職業に目を向けると、残念ながら女性で現在この分野の第一線で活躍する人の数は多くはないものの、例えば英国では医師・弁護士になるべく勉強中の人数では、女性が男性を上回る。
3. 労働力に占める女性比率
米国では、労働力全体に占める女性比率が、1920年の統計開始時の2対8から徐々に増加し足下では5割に限りなく近づいている。
この数字を別の切り口でみると、15-64歳の女性全体に占める「働く女性」の割合ということになるが、デンマークやスウェーデンの70%超、米国の65%に対し、日本57%、イタリア45%などとなっている。
4. 企業と女性
世界全体でみると、会社役員に占める女性比率は約7%。米国では15%に達する一方、日本では1%に満たない。
一方、米コンサルティング会社Catalystによると、米国の企業では、女性をシニア・マネジメントに多く起用している会社の方がROE(自己資本利益率)が高い傾向がみられる。
5. 消費者と女性パワー
著名なストラテジストであるGoldman Sachsのキャシー松井氏が考案した「女性の社会進出が進むにつれて成長率が高まる115銘柄」の株式を組み合わせたファンドは、過去10年間で市場全体の伸び率13%程度を遥かに凌駕する96%の伸び。ちなみに銘柄の内容は、美容やファッションに留まらず、オンライン・ショッピング、「中食」関連のビジネス、そして金融サービスなどと幅広い。
6. 少子化と女性の社会進出
「女性の社会進出は少子化を招き、長期的には国の経済成長の阻害要因となる。」
結構よく聞かれる議論である。
ただ、数字をみるとそれは必ずしも正しいわけでもないらしく。
先の例でも引用された通り、「女性の社会進出が進んでいない先進国」の典型例として引き合いに出されるのが日本とイタリア。日本の出生率が1.29と発表され更に急速に進む少子化に警鐘が鳴らされたことは記憶に新しいが、イタリアの出生率も実は1.2そこそこ。
一方で、先に引用した通り逆に「女性の社会進出が最も進んでいる先進国」の代名詞といえるスウェーデンでは出生率は1.6を上回り、また米国の出生率は2.1という驚愕の数字である。

最近の記事から: ECONOMIST誌’A Guide to Womenomics’(4月15日号)_f0023268_1192753.jpg

*注: 写真は本文とは関係ありません(笑)。


簡単な考察
* まずは、得てしてこの手の記事にみられることだが、必ずしも数字を全て鵜呑みにできるわけではないと思う。それはメディアのバイアス云々の話を置いても、「客観的なデータを集める」ことは非常に難しいと思われるから。
「例えば、15-64歳の女性が働く比率」の項目では、週一回パートタイムで働き税金面でも扶養家族の扱いを受ける女性と専業主婦の実質的な違いは大きいとは思えず、前者を「労働力」に含めることにどれだけの意味があるのだろう?という気はする。

* とはいうものの、全てが意味のない分析では決してないと思う。
日本という劇的な少子化が進む社会に暮らす身としては、やはり女性を原動力にして少子化による経済成長の低下を食い止める、という考え方には、期待を込めてエールを送りたい。
女性の労働を経済化することには限界があるとの批判を受けるかもしれないけれど、一つの例として、欧米では一般的な「NANNY」という職業がある。日本だとベビーシッターのようなイメージが強いが、実際には働くママの代わりに日中留守宅の管理をしながら子供の面倒をみるという仕事なので、責任はそれなりに重く当然ながらそれに伴って給与水準もかなり高い(労働時間などにもよると思うが例えば年間500万円とか)。
要は、「NANNY」の仕事というのは、女性が皆専業主婦だとすると経済価値の創出に繋がらないが、女性が一人社会に出ることによって創出される仕事であるという観点からは、ダブルの雇用創出なのである。

* 社会のサポート・culturalなサポートは不可欠。
米国や英国では、「働くママ」をサポートする社会基盤が整っている。
税制や社会保障面での柔軟性ももちろん必要であるし、保育園の充実などという基本的な部分も重要である。
社会基盤の充実とメンタリティーは相互に影響するものであろうが、私の周囲で働く米国人や英国人の女性は、かなりフツウに出産後仕事に復帰するパターンが多い。「そのまま辞めちゃおうとか思わなかった?」などと聞くと、逆に「何で?」などと聞き返される始末。
ただ先にみたとおり、日本やイタリアでは、そもそもが仕事をしていない女性でも子供を生む人の数が減少傾向にあるのは憂うべき事態だろう。アメリカやスウェーデンの例を日本にそのまま適用できるかどうかは分からないが、仕事を持つ女性が子供を育てやすいような環境を整えることが出生率アップへの近道ではないかと思う。
by canary-london | 2006-04-23 11:10 | current