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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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英国ポテチ戦争

f0023268_1049932.jpg最近FTのマワシモノではないかと疑われるほどFTへの言及が多いのだが、何しろクリエイティビティーのない人間なのでメディアからの借り物も大目に見て頂くことにして。
本日の気になった記事。
‘How the crunch came in the long war of the crisps’: 著者はJohn Kay。

2006年1月某日、英国のポテトチップスメーカー老舗であるGolden Wonder社破綻のニュースが流れた。たかだかポテトチップスメーカー(他にも製品はあったのかもしれないがポテチ以外思いつかない)ごときで、何でイギリス人はこんなに感傷的になっているのかとそのときは首をかしげたものだが、本日(3月7日)付の記事を見て、何となく。納得。

まずは数字から。
食にこだわりがないといわれるイギリス人(2012年のオリンピック開催地をめぐる昨年7月8日の惜敗の折にシラク仏大統領が口にした台詞については以前もコメントしたとおり。)。
全般的な食事情は、私が住んでいた15年ほど前に比べるとこれでもかなり改善した方だと思うのだが、食についてはこれからも頻繁に書くことになると思うのでまた別の機会に。

よれば、イギリス人は年間平均して老若男女問わず50ポンド相当のポテトチップスを食べており、これは量にすると150袋程度。
殆ど二日に一袋という恐るべしペースでポテチを消費している計算になる。
イギリス人の食に対する「無頓着さ」を示す一つの数字ともいえるだろうが、学校給食の改善を訴えすっかりセレブの仲間入りを果たした時の人Jamie Oliver主導で、特に子供たちの食生活改善に向けた政府あげての大キャンペーンが目下進行中。学校からお菓子の自動販売機を撤去し代わりに自販機にはフルーツやシリアルをストックするようにしろ、などなど。
確かに日本の学校には、そもそも自販機なんてものがなかったぞ。

Golden Wonder社の破綻を受け、我が英国のポテトチップス市場は事実上一社による独占状態となった。勝者はWalkers社。現在米PepsiCo社の傘下にある。
ちなみにPepsiCoは米国ではFrito Lay社を抱えており、正にポテチ市場では紛れもないグローバル・ナンバーワンである(Frito Layが1960年代にコーン・チップスを製造するFrito社とポテト・チップスを製造するLay社の二社をPepsiCoが同時に吸収したことによって生まれたことも初めて知った)。

1961年から1986年までの時期は大手タバコ・メーカーのImperial Tobacco社の支配下にあったGolden Wonder社。
おそらくこの時代がGolden Wonder社の文字通りの「黄金期」であり、第二次大戦直後から市場の中核を占めていたSmith’s社をあっという間に凌駕、各種フレーバーのポテトチップスと湿気を防ぐ包装技術でその地位を不動のものとした。
しかし、1986年にImperial Tobaccoの経営陣が変わると共に、Golden Wonderの命運は大きく変化。多角化経営の整理を目的にDalgety社に売却され、その後最終的にMBO(マネジメント・バイアウト)が行われるまで経営は迷走。
このタイミングを逃さず、後発組としてより小規模なWalkers社を買収していたPepsiCoがコマーシャルに当時の人気フットボール選手Gary Lineker氏を起用するなど、畳み掛けるようなマーケティング攻勢を仕掛けた。これを契機にWalkers社とGolden Wonder社の地位は逆転、以来Walkersが11年間首位を保った幕引きが今年1月のGolden Wonder破綻というわけ。
戦後のSmith’s社が支配的であった時期まで遡り、Imperial TobaccoがGolden Wonderを買収した1961年を「第一次ポテチ戦争勃発」とすると、40年強続いた「ポテチ戦争」。

記事の締めくくりは、ブランド・マネジメントの重要性を説いているのだが、そんなこじつけはともかくとして、私としては純粋に「ポテチ戦争」の背景を楽しく読んだ次第。

オフィスの自販機に色とりどり並んだWalkersのポテチも何となく誇らしげに見えてきたりして。
ちなみに先に述べたJamie Oliverの食改革の影響はオフィスでは微塵も感じられず、自販機にはポテチとチョコレート・バーが所狭しと並べられている。
誰かオトナの食生活も改革を訴えてくれないかな。
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by canary-london | 2006-03-08 10:52 | culture