ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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エレベーター考

毎度思うことだけれど、エレベーターというもの、それにあの狭い空間の中での人間模様って実に面白い。

私の現在の勤務先は9階建てのビルの3階であるため、出社・退社時にこの興味深い空間で過ごす時間というのは残念ながらさほど長くないのだが、東京の満員電車でもなければあんなに狭い空間で他人同士が互いに密着して過ごす場面は少ないと思うので、この狭さ・密着度ゆえの面白さなのだろうと思う。
エレベーターの狭さが笑いのネタを提供するのは何も新しい話ではなく、サトウサンペイ氏の「フジ三太郎」だったか、エレベーターの中で誰かがオナラ(しかも所謂‘すかしっ屁’というもの)をした場合の犯人探しを巡る機微など子供の頃面白く読んだ記憶がある。

狭さということと会話について。
特に我々のような業界では、部署によりあまり公になっていない情報(例えばある会社の株価に影響を与えるような)を持っている人もいるため、エレベーターの中で固有名詞を出して仕事に関する会話をするのは避けるべし、といった何かしらのガイドラインが設けられていることが多いと思う。
・・・この「固有名詞を出さない」という部分、人によってはあまりというかまったく守られていない(笑)。別に私自身、株価に影響を与える云々でひと儲けできるような情報に耳をそば立てているわけではなく(残念ながらそういった才能も覇気もまったく持ち合わせていない)、同僚とお客さんに関する情報で「へえー」と思うようなことの情報源が意外とエレベーターだったりするという実に低俗・世俗的なレベルの話なのだけれど。
多少補足として言い訳をすると、固有名詞に関するセンシティビティーは、建物として弊社だけが入るビルか、あるいは複数の企業が雑居するビルかによっても違いがある。
弊社のロンドンオフィスは前者。とはいえ、もちろん外部からのお客さんが乗っていることは多いので、乗り合わせるのは弊社の人間ばかりとは限らない。

ロンドンという地が、上に書いたようなエレベーターにおける「会話の傍若無人さ」に拍車を掛けるのは、多国籍である環境にも少なからず原因があるのかもしれない。
自分自身について考えてみても、「日本語なら分かるまい」と思って公共交通機関の中で友人と日本語で話をし、しばらくして反省した局面は一度二度ではない。
周囲の人について何か悪い事を言っているわけではないのだが、単純に「英語で皆に意味が解せる内容だったら相当恥ずかしいよね」といった類のこと。
弊社では、部署にもよるので分からないけれど、英語でない言語(その殆どがヨーロッパの言語だが)を母国語とする人は半分以上に上るのではないかという印象。
フランス人など結構熱くなる傾向があり、フランス人同士ともなると、エレベーターの中で周囲にはお構いなしといった風情で早口で喋り続けている。
・・・自分にフランス語が分かれば面白い会話をしているに違いない。

エレベーターの中に設置されることの多い鏡というのも、このハコの面白さアップに貢献している。
私は別にナルシストでも何でもないのだが、出勤時にエレベーターに自身の姿を映してチェックする作業は欠かせない。実際、朝も早いと「取るものも取りあえず」家を出ることが殆どなので、エレベーターの鏡を見て初めてマスカラがとんでもない位置にはみ出していることに気づいて慌てて直すことも多い。
出勤時だけでなく、デスクの同僚数名と持ち回りでオフィス裏のスタバにコーヒー調達に走るときも、クセになっているし他に特にすることもないのでエレベーターの鏡を凝視することになる。あるときコーヒーのトレイを持って鏡を見つめていたら、乗り合わせた同僚(といっても知らない男性だが)に「その鏡の裏は隠しカメラになっていて撮影されているんだよ」とからかわれ、一瞬真に受けて本当にびっくりしてしまった。
・・・英国的sense of humourだなあ。

こんなすべても、旧式で鏡以外特に面白いものも設置されていないエレベーターゆえ。
最近の、特に東京の新しいオフィスビルに多いTVモニターがついているエレベーターなどでは、私がつらつらと書いたような原始的なエレベーターの楽しみは味わえないことだろう。世の中「エレベーターは狭いもの」といった常識も変わってくるもので、自分が東京で勤めていたビルは、ガラス建ての建物の中心を吹き抜けにし四方に大型エレベーターを据えた斬新なデザインを不動産会社が自慢にしていたが、エレベーターが大きいと、ドアが閉まるのに時間が掛かり、例外なく急いでいる朝の出社時など本当に苛々する。大体が、ドアがゆっくり閉まり切る直前に強引に駆け込んでくる輩がいるもので、こうなると安全上の理由から大きなドアが再度悠然と開き切ることを余儀なくされ、更に人が駆け込んでくるという悪循環。
デザイン性より機能性を重視してほしい、と毎朝S不動産に心の中で悪態をついたものだ(笑)。
そんなわけで、時代と共にエレベーターも変化・進化するのだろう。
50年後・100年後の世界には、エレベーターというものすらなかったりして。そんなジョージ・オーウェル的な思いを抱くと、空想がどんどん広がり、気づくと傍らのワイングラスが空になっていたりするので困ったものだ・・・。
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by canary-london | 2009-04-17 13:57 | current