ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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続・ジェンダーおよび「母国語」について

前回デスクにおけるジェンダー論に少し触れたので、このトピックについてもう少し。

我々のデスクには、女性を中心に饒舌・毒舌な人が多いせいかもしれないが(「強い女性」でないと、基本的にはマッチョな男性社会である投資銀行でのサバイバルは無理・・・というのは一般化し過ぎだろうけれど、自分の意見をしっかり持ってそれを表現する女性が多いことは確かだ。)、ジェンダーについて一般化する傾向は意外に強い。
もちろん、セクハラやパワハラについては著しく敏感な社会なので、センシティブなトピックの核心は上手に避けながら会話がされるし、そもそも「全て笑いに昇華してしまえばOK」という考え方が根底にあるのだろう。大体のことは冗談交じりのコメントとして発せられ、「え、それってちょっとヒドイんじゃない?」と思うようなことも笑い飛ばされて終わるので、後腐れがない。

前回書いた「電話を取る」ということに関して言えば、女性陣曰く、「男性はマルチ・タスクできない」というのが最大の冗談交じりの批判。電話中の人間に掛かってきた別の人からの電話を取る我々は、その度に「N、○×から電話だけどどうする?今出る?それとも折り返し?」「A、マスコミのX社から今日のディールについて問い合わせだけど、本件のマスコミ対応は?B社?」といったやりとりをすることになる。

ボディ・ランゲージも必須。
手のひらで「制止」のポーズを取れば、外から入ってきた電話の方が大事な電話で、今の通話を終わらせてその電話を取るのだろうとこちらも分かる。指をくるくる回す仕草をすれば、折り返し。
私自身、大事なカンファレンスコールに耳をそばだてている時などはなかなかこれが出来ないので自戒の念も込めているのだが、現在の通話に没頭してしまって、自分の直通ラインを同僚が取ってくれたことにすら気づかない傾向は、確かに男性の方が強いかもしれない。
デスク女性の中でもとりわけご意見番であるJとA(最近いやに登場回数が多いが・笑)は、いずれも子育てしながらプロフェッショナルな仕事をこなすスーパーウーマンなので、そんな意識もあるのかもしれない。

この、「電話が掛かってきたときに最もマルチタスクできない」という烙印を押されてしまっているのが、私の隣に座っている若手・Rなのだが、イタリア系スイス人である彼は、ドイツ語・イタリア語・英語を自在に使いこなすtrilingual。
三つの言語の間で瞬間的に頭の切り替えが出来るのに、自分が通話中のときに同僚が自分に向って話しかけてきている事実にも気付かないというのは、日本語と英語だけでも閉口している自分としては理解に苦しむのだが、後者はいってみれば同時通訳的な才能で、幾つもの言語を操るということとは必ずしも相容れないものなのかもしれない。
英語主導の我々のデスクにおいては、三言語の間で行き来するRと、日本語でも英語でも早口でボリュームの大きい私が常に異端児扱いなのだ(これはあくまで弊デスクの話であって、会社の平均をとればmulti-lingualの人の方が多いものと思う)。

Rと話していて最も驚いたのが、「母国語」ということについての考え方だった。
スイスの中で、幼少時にイタリア語を話す地域からドイツ語を話す地域に引っ越した彼は、小学生時代から家庭ではイタリア語を話し、学校ではドイツ語を話す生活が身に着いていた(英語はその後に学んだのだから、三カ国の言語の中ではもっとも不得手なのだろう。)。
「じゃあ、貴方にとっての‘母国語’は何なの?」と聞くと、間髪入れずに
「ドイツ語」という答えが返ってきた。
彼にとっては、学校で友人と話す言語が「母国語」であり、家庭で両親と話す言語の方が
「外国語」なのだ。これは衝撃だった。

そんなことで、「ドイツ語が僕の母国語」を自負する彼なのだが、血は争えないというべきなのか。悪いけれど「イタリア的美男子」の素養はあまりないRだが、デスクの飲み会の罰ゲーム的余興で「女の子一人口説いておいでよ」と言うと、ダンスフロアにばっちり可愛い女性を連れて出てきたりする。
私の勤めるCanary Wharfにはイタリア人の経営するカフェが幾つもあるのだが、お昼にサンドイッチやサラダを買いに出るだけでも、Rがいてイタリア語で女性店員と二言三言交わすだけで、パルマハムの盛りが全然違ったりするのだから、やっぱりRは本人が思う以上の「イタリア的要素」を持っているのだろうと思う。
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by canary-london | 2009-03-02 00:31 | culture