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ロンドン生活開始から4年強経過。あこがれの田舎暮らしも敢行!このまま骨を埋める展開か??インベストメントバンカー日々迷走中。


by canary-london
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クリスマスの残り物其の弐: くるみ割り人形とバスキング

クリスマスに書きそびれたこと、もう二丁書いてしまおう。

二つ目、くるみ割り人形と憧れのクリスマスツリー、そして’giving’ということについて。
12月15日は、コベントガーデンのROHで吉田都さんの踊る「くるみ割り人形」を観た。
異国の地にいると日本人の芸術家を応援したいという気持ちは、二度しかない吉田さんの出演する回をあえて選んだ理由の一つではあるけれど、この演目の「クリスマス」を体全体で表現したようなところが本当に好き。1892年に初演された当初、批評家からの評価は散々だったというからチャイコフスキーも気の毒だ。

良く考えたら、キャストは若干違うものの全く同じ演出のものを昨シーズンも観たのだったけれど、音楽も踊りも舞台も、クリスマス気分を盛り上げてくれるという意味ではこれもまた季節の風物詩。一年に一度見たっていいじゃないか。
クリスマスの残り物其の弐: くるみ割り人形とバスキング_f0023268_734679.jpg
前回クリスマスツリーについて書いたが、くるみ割り人形に出てくるクリスマスツリーは言ってみればあらゆる子供の憧れなのではないだろうか。
根元には、大小様々の溢れんばかりのプレゼントの数々。
クララが幻想の世界に引き込まれる時、彼女が小さくなるにつれてツリーは天井を越えてどんどん高く大きく伸びていく。

ニューヨークに住んでいた頃、我が家のクリスマスツリーは人工的な物で決して大きくはなかったけれど、うず高く積まれたプレゼントは子供の自分をわくわくさせるものだった。
思えば、「クリスマスはとにかく人にプレゼントをあげたい!!!」という自分の妙な特性(ある意味欧米かぶれなのかもしれない)は、子供の時に植え付けられたものなのかもしれない。

この‘giving’に関連するのが、三つ目。
面白いことに、クリスマスが近づくと精神が寛容になる。
自分がサンタさんなわけでもあるまいし、クレジットクランチ隆盛の折財布の紐は固く締めなければいけないのだが、街の雰囲気に背中を押され、少なくとも私はどうも俄か博愛主義者になる傾向があるようだ。

今年の冬は異常に寒さが厳しく、駅やスーパーの出入口など至るところで物乞いをするホームレスの人達はひと冬乗り切れるのか心配にもなってしまうが、私は原則として何もしていない物乞いに何か与えることはしない(もちろん自分の暮らす先進国の環境下でという意味ではある)。同情票を買う作戦なのか、犬を連れている物乞いも多いのだが、非情なようだがドッグフードを買う余裕があるなら物乞いしてる場合じゃないだろうと思うし、本当にそこまで貧しいなら犬を道連れにするなんてもってのほかだ。

・・・話が少し逸れたが、クリスマスには精神が寛容になることについてだった。
私はそんなわけで、何の努力もしていない人に金銭をあげることはしないけれど、一方でバスキング(ストリート・ミュージシャンとして合法的に公共の場で演奏し金銭を稼ぐパフォーマンス)は積極的にサポートする。
問題は、バスカーは駅の地下通路などで演奏していることが多く、彼らの前を通る時は、自分自身ほぼ例外なく急いでいることである。なので、ジャンルを問わず「お、いいな」と思っても、ハンドバッグから財布を出す暇もなく通り過ぎてしまうということになりがち。

今シーズン思いついたことは、バスカーには公衆の面前で演奏しているということ自体に敬意を表し、とにかく10ペンスでも50ペンスでも何でも、帽子やギターケースに入れてあげようということ。こんなことを考えるのは、やはり自分の中での‘giving’精神が最高潮に盛り上がっている12月中旬なのだから我ながら分かり易くて笑ってしまう。
しばらく実践するのだが、やり始めるとこれはこれで矛盾が出てくる。
というのは、確かに演奏家はそれだけで何も努力していない人よりは見返りを受ける権利があると思うのだけれど、中には「コイツいかにも手抜きしてるなあ」なんて輩もいるのだ。となると、今までに素晴らしいと思いながらも素通りしてしまった無数のバスカーに申し訳ない気もしてくる。
一晩聴いたコンサートなら演奏家への思いは拍手の仕方に十分込めることが出来るけれど、一期一会でものの十秒程度しか遭遇している時間のないバスカーを瞬時にして差別化するのは実に難しい。
・・・何か妙案、ないものだろうか。
by canary-london | 2009-01-14 07:36 | diary